「ざっくりと意味は把握できるけれど、細かく意味をとれない」「長文になると途中からついて行けなくなる」など、なんとなく聞き取れているけれど、もう少しリスニング自信を持ちたいという方は多いのではないでしょうか。
今回は、読み書きはそこそこできるけれど、リスニングがどうにも苦手で上達しない……という方に、リスニングに苦手意識を感じる原因と効果的な学習方法についてお伝えします。
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リスニングは大きく2つの要素から出てきています。聞き取りと意味取りです。リスニング上達のコツは、この2つを上手く機能させていくことです。
リスニングのひとつめの要素は、英語の音を「聞き取る」です。つまり、英語を言葉として認識する。
どんな単語なのか?どんな英文が読まれているのか?をイメージできてはじめて「聞き取る」ことができます。
リスニングのふたつめの要素は、聞き取った音の「意味を取る」です。
つまり、英語を日本語に変換する、意味のある塊として認識し、頭にイメージが浮かぶ状態です。
たとえ単語が聞き取れたとしても、文脈上の意味は何か、また文の構成は否定なのか疑問なのかが分からないと意味を取ることはできません。
リスニング対策は継続的にやっているのに上達しないのはなぜか? その原因はひとつではありません。あなたに当てはまるリスニングが上達しない原因は何かを考えながら読み進めてみてください。
たとえ意味を知っている単語であっても、きちんと発音を理解していないと正しく聞き取ることはできません。
しかしながら、単語の音ひとつひとつを構成する母音や子音を理解して正確に発音できる人は多くありません。
英語の音素の数は日本語よりも倍近くあり、日本語にはない発音も多く存在しますから、正確に聞き取るためには、発音知識は欠かせないのです。
英単語はそれだけで発音する場合と、他の単語と続けて発音する場合とでは音が変化します。この変化を知らないと文中に出てくる単語を正しく聞き取ることはできません。
単語と単語のつながりで音が変わることや、メインの単語は強く前置詞などの単語は弱く読まれるといった文のリズムを知らないと、紙に書かれていれば簡単にわかる文章でも会話となると聞き取れなくなるのです。
音の変化のパターンは「連結(Linking)」「脱落(ElisionもしくはReduction)」「同化(Assimilation)」などが挙げられます。
文中で2つの単語が結びついた時に音が変わることを連結(Linking)といいます。
(例)Pick up.
→ 「ピック」+「アップ」=「ピカップ」
このように2つ以上の単語がまとまったひとつの単語に聞こえることから、日本人にとってはなかなか認識することが難しくなります。
それぞれの単語の意味は知っていても、連結されたものを「知らない単語」だと認識してしまっては意味は取れません。
本来は発音されるべき音が省略されて発音されなくなることを脱落(ElisionもしくはReduction)といいます。
(例)good morning
→「グッド」+「モーニング」=グッモーニング
このように[d]の音が小さくなったり、消えて発音されなくなることを知らない、聞き慣れていないと、聞き逃してしまうことがあります。
単語の末尾の音と次の単語の始まりの音が、本来のスペルで発音される音とは別の音になることを同化(Assimilation)といいます。
(例)did you
→「ディドゥ」+「 ユー」= ディ ジュー
このように隣り合う単語がそれぞれに影響されて、通常このつづりでは発音されない、違う音に変わります。その知識がない場合は聞き取りに支障が出てくるでしょう。
英語として音は入ってきたとしても、そもそも語彙力や文法の知識がないと意味は取れません。
また疑問文なのか否定文なのかを瞬時に判断できなければ、文章全体で何を伝えたいのかも理解できないですよね。
日本語に訳してから文章を理解しようとすると、最後まで聞き取らなくてはならず、読み上げるスピードについていけません。
英語の語順は日本語とはまったく違いますから、日本語に訳していては遅くなるのです。
次から次へと読まれる文章に即座に対応するには、英語の語順そのまま理解していかないとスピードについていけません。
日本語でもそうですが、どんな場面でどんな立場の人が話をしているのかなど、会話の背景知識があるかないかによって、会話の理解度は変わってきます。
例えば、転職して初出社した職場で、いきなり「アレやっておいてね」と指示されても、何をすればいいのか分かりませんよね。
たとえ、英単語や文の構造が分かったとしても、背景知識が乏しい人には内容を理解できないのは当たり前です。
これまでの内容を踏まえて、リスニングが上達しない間違った勉強法、つまり、やってはいけない勉強法をお伝えします。
分からない英語を音として聞き流していても、意味が分からない単語は言葉ではなくて「音」でしかありません。つまり、雑音と変わりないのです。
日本語と英語の語順の違いを理解し、意識的に英語の語順のままで意味を理解しようとせず、ただ聞き流すだけでは身につかないことは明らかです。
視覚情報が多い素材の場合、意識しなくても映像に目がいってしまい、耳で聞き取ることに集中することが難しくなります。
リスニングの練習のはずが、いつの間にか目で情報を読み取る訓練になってしまうのです。
知らない単語、よく分からない構文、会話の背景が分からない音声を聞いても、理解を深めることはできません。
スクリプトを読んで理解できる英文を使用しないと、聞き流しと同じように、単純に英語の「音」として認識するだけ。残念ながら、学びにはつながりません。
リスニングが難しいと感じている、リスニングができないと悩んでいる人の多くは、そもそも、英語を聞く機会も時間も少ない可能性があります。
たった週1回のレッスンだけでリスニング力が向上することはありません。筋トレと同じく、コツコツと一定時間、意図して英語を聞き取る機会を作る必要があります。
ここでは、リスニング力を段階的にアップさせていく方法、リスニング上達のコツをお伝えします。
まずは現状把握です。何が聞き取れて、何が聞き取れないのか?自分のレベルはどこにいるのか?を知ることが大切です。
目指すレベル、目標地点との現状の差を確認しないことには、始まりません。
スクリプト付きのリスニング教材などを使って、聞き取れない音や語彙をチェックしてみましょう。
聞き取りが難しい音が判明したら、単語の発音や文の中での音声変化に関する知識を増やしていきましょう。
英語の母音や子音について、発音記号ごとに音が出せるよう練習しましょう。
発音記号によって、舌の置く位置や口の形は異なります。それらを理解して、自然と音が出せるように身体に覚え込ませましょう。
すでに意味を知っている単語でも発音記号を調べて、発音記号通りに正しく発音できるようにしましょう。
文章の中の単語は音が変化しますから、前述の「連結(Linking)」「脱落(ElisionもしくはReduction)」「同化(Assimilation)」などを理解して音を出せるようになりましょう。
発音記号や音声変化のルールの知識を学んだら、実際に音声を聞く学習にすすみます。
教材は文章として読んで「少し簡単」と感じる程度のものを使いましょう。
レベルの高い教材を選びたくなる気持ちは分かりますが、読んでも理解できない、知らない単語がいくつも入っている文章は聞き取るハードルが高くなるので、ここはぐっと我慢です。
リスニングの向上には、日々の訓練の積み重ねが欠かせません。ここでは、リスニングを上達させるおすすめの勉強法をいくつかご紹介します。
英語の音声教材を使って、音を真似るトレーニングです。発音が出来たら聞き取ることが出来ますので、結果、リスニング力が向上します。
方法はオーバーラッピング、リピーティング、シャドーイングの3つです。
オーバーラッピングは、教材の文章を確認しながら英語の音を聞き、同時に文章を声に出して読んでいく方法です。
リピーティングは、音声を聞いた後に、そっくりそのまま真似をして発声する方法です。
音声と同時に発声するのではなく、1文が読まれた時点で音声を止めて、聞いた音を真似て繰り返します。
音声をいったん止めるリピーティングとは異なり、流れてくる英語の音声を追いかけながら、その真似をして発音するのがシャドーイングです。
聞き取りと発声を同時に行うことから、オーバーラッピングやリピーティングよりも難易度は高くなります。
スラッシュリーディングとは、英語の語順通りに理解するために、英語の意味の区切りごとにスラッシュを入れて読んでいく方法です。
英語の語順のまま理解できるようになると、リスニング力の向上につながります。
ディクテーションとは、数十秒のまとまった音声を流しながら、聞き取れた内容を正確にかき取っていく方法です。
初心者向けの空欄を埋めるパターンの他に、負荷の高い、全ての文章を書き取るパターンがあります。
基本の英文法を一通り復習しましょう。分厚い文法書である必要はありません。中学高校レベルの参考書で十分です。
リスニング用のスクリプトを読んでみて、意味が分からない単語や記憶があいまいな構文・文法などをピックアップして、そこを重点的に学習するのもオススメです。
リスニングの苦手意識を克服し、上達への第一歩を踏み出すためのオススメ教材をご紹介します。
ご自身のレベルに合った英検やTOEICなどのテキストを用意しましょう。
簡単すぎる教材、逆に、出てくる単語がほとんど理解できないなどレベルが高い教材も避けてください。なお、いくつもの教材に手を付ける必要はありません。
今や、オンラインでさまざまなコンテンツを見つけることが可能です。
例えば、NHKのBS1で放送中の「攻略!ABCニュース英語」は時事英語で、かつ、日本語の解説を交えた構成となっています。5分番組ですから、忙しいビジネスパーソンにもおすすめです。
他にも、イギリスの公共放送BBCが提供する「6 Minute English」は中級者向けで、リスニングには欠かせないスクリプトがついていますから、時事英語のとっかかりには最適ですね。
TEDはアメリカの非営利団体で、世界中の知識人や著名人の講演を動画配信しています。
講演スピーチの視聴は全て無料で、さらに、日本語字幕や英語のスクリプトを見ることもできます。
スピーチの話題は多岐にわたるので飽きませんし、時間は長くても15分程度なので、リスニングの勉強にはもってこいです。
ビジネスパーソンにとってリスニングは英語の4技能の中で最も重要なスキルです。
ひとつめの理由は、ビジネスにおいてのコミュニケーションは、読み書きではなく、話したり聞くことの割合が高いため。
もうひとつは、リスニング力の向上が、スピーキング力の上達を左右するカギとなるからです。
インプットの質は、アウトプットの質に比例します。つい億劫になりがちなリスニングですが、ぜひ前向きに取り組んでみてください。