日本人の課題は4技能のバランスの悪さ! 第二言語学習理論に基づいた効率的でバランスの良い4技能学習とは?
これまで日本の英語教育は「読む」「聞く」を重視され、4技能をバランスよく学べていないという問題点が幾度となく取り沙汰されてきました。
日本人として日本で生活していく中で、英語を話す必要性が低かったことから、「英語は受験で使うもの」というイメージを強く持ってしまい、受験英語に傾倒していたという風にも考えられます。
そこから、いざ英語が必要な場面に遭遇した時に、英語がうまく話せなかった経験から、英語への苦手意識が強まり、能力向上への意欲が削がれていしまっている人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、4技能をバランスよく向上させる学習法についてご紹介します。
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日本人の課題は4技能のバランスの悪さにある?
文部科学省が行った英語のテスト(高校3年生およそ6万人を対象)によると、「話す」と「書く」は全体的に習熟度が低く、全く点が取れない人の割合も一定数いるという結果となりました。
文部科学省が目指す基準(CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)A2レベル以上)を満たした高校生の割合は、「聞く」が33.6%、「読む」が33.5%であったのに対して、「話す」は12.9%、「書く」19.7%となっており、バランスの悪さが際立ちます。
テスト結果を見る限り、リスニングやリーディングに対して、スピーキングやライティングの技能が低いのは、やはり、大学受験においての配点の比重の影響も考えられます。
しかし今後、4技能をバランスよく習得することが文部科学省の方針を打ち出しており、学習指導要領にも記載されているため、改善される方向になっていくでしょう。
英語の4技能を測るテスト
ここでは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を測れる検定試験についていくつかご紹介していきます。
TOEFL
TOEFLは、英語を母国語としない人を対象としています。アメリカやオーストラリアなど英語圏の大学に入学して学ぶために必要な英語力を持ち合わせているか?を見極めるための試験です。合否判定ではなく、スコア(点数)型の試験となります。
留学を想定した、海外生活におけるコミュニケーションに欠かせない「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの技能を総合的に測定します。試験時間は長く4時間半程度かかります。
リスニングはアメリカ英語が用いられています。スピーキングはパソコンに向かって指定された時間内で話さなくてはいけませんし、ライティングもタイピングスキルを求められます。
IELTS
IELTSはTOEFLと同様に、英語圏の大学に進学するために必要な英語能力を証明するための試験です。
ただし、アメリカの一部の大学ではIELTSスコアを入学基準とし採用・認定しない場合がありますので、留学先の国によっては注意が必要です。
なお、TOEFLとは違って筆記式のテスト形式で、リスニングもイギリス英語を始め様々な国のアクセントが用いられています。またスピーキングは面接官とのインタビュー形式です。試験時間は3時間弱です。
GTEC
GTECは、大学入試にも活用可能な検定として(株)ベネッセコーポレーション が実施・提供している英語4技能検定です。合否で判定するのではなく、スコア(点数)が出る方式です。
試験はリーディング・ライティング・リスニング・スピーキングの4つで構成されており、ビジネスの英語を扱うTOEICとは違い、中学・高校生の受験者が多いのが特徴です。
ライティングセクションではパソコン操作が必要となるため、事前にタイピングの練習をして慣れておいた方がいいでしょう。
TOEFLやIELTSよりも受験料が安いことも魅力の一つかもしれません。
TOEIC
TOEICは、英語の実践的なコミュニケーション能力を計るスコア型の検定です。
一般的にマークシートで回答を埋めていく方式(TOEIC L&R)の英語検定として知られていますが、4技能を測定するためには、スピーキングとライティングの能力を測定する「TOEIC S&W」も合わせての受験が必要です。
なお、受験者のほとんどは、日本や韓国などのアジア圏で占められています。
大学入学共通テストの今後は?
グローバル化やAi技術の発展など、急速な時代の変化に対応できる人材育成を目指し、昨今「教育改革」がすすめられてきました。その一環として、センター試験が廃止となり、大学入学共通テストを実施されます。
しかし、導入を予定していた「大学入試英語成績提供システム」を見送る発表が文部科学大臣から行われ、英語のの民間資格や検定の共通テストへの導入も同時に延期となりました。
しかし、新学習指導要領が適用となる2024年度以降に実施する試験からは導入が予定されています。
英語は4技能だけじゃない? 「4技能5領域とは」
これまで語学には、「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つの技能が必要だと言われてきましたが、今では「話す」がさらに2つに細分化され、4技能5領域が必要だと言われるようになりました。
ここでは各技能・領域について解説していきます。
英語の4技能①/リスニング(聞く能力)
リスニングとは、英語を聞き取って、意味を理解する能力です。
耳に入る音を英語として認識することと、聞き取った音を母国語の意味とリンクさせて内容を理解することの2つの要素から構成されています。
英語の4技能②/リーディング(読む能力)
リーディングは英語の文章を素早く、かつ正確に読み取る能力です。
そのためには、英語を英語のまま理解する、英語の回路の構築が欠かせません。パラグラフ構成を指揮して、スキャニングやスキミングの精度も高める必要があります。
英語の4技能③/ライティング(書く能力)
ライティングは、違和感なくスムーズに読める英文を書く能力です。
文法や語彙の知識はもちろん、英文作成、パラグラフ構成のルールなどを知っておく必要があります。
英語の4技能④/スピーキング(話す能力)
スピーキングは、英語を話してコミュニケーションをとる能力と、自分の考えや意見などを相手に伝える能力、この2つの領域に分かれます。
領域①/会話など相手ありきのやり取り
「やりとり」の領域は、双方向でのコミュニケーションをとることを意味しています。瞬時に相手からの問いかけに答えるなどの適応力も含まれます。
領域②/自分の意見をまとめ、発表すること
「発表」の領域は、積極的に自分の考えを率直に述べる、もしくは、調べた情報などをプレゼンテーションで伝え合う活動を意味しています。質疑応答や感想などを交換するといったやり取りも含まれます。
4技能の学習順を工夫すれば効率的に学べる?
第二言語として英語を習得するためには、母国語とは違う順序で学う方が効率的です。
幼少期の語学習得順序は、聞く→話す→読む→書く
母国語の習得は、赤ちゃんがどのようにして言葉を習得していくかを見ればわかりやすいでしょう。
まず母親からの声掛けを「聞く」から始まり、少しずつ話せるようになり、最後に「読む」と「書く」を習得するという順序となります。
第二言語の習得順序は、聞く→読む→話す→書く
第二言語の場合は、まず自分の中に情報を入れる「聞く」や「読む」に始まり、徐々に学んだ内容をアウトプットしていく順序となります。
ある程度の情報が頭の中に入っていないことには、「話す」や「書く」ことはできません。
「聞く」と「読む」で英語の基本を押さえた後、「話す」と「書く」を取り入れることで、効率的に学習することが可能です。
英語の4技能をパート別に伸ばすための学習法とは?
実際に4技能を伸ばす学習方法について解説しています。
「文法」「語彙」「発音」の知識の基礎は共通して必要
日本語と英語の言語間距離は、最も遠い組み合わせだと言われています。つまり、文法や語彙などの共通点が非常に少ない言語同士ということです。
中国語の漢字を見て意味を予想することはできても、英単語の場合はそうはいきません。
したがって、文法、語彙、発音の知識がないと、何を言っているのか、何を意味しているのかを推定することも、理解することもできないのです。
まずは、文法、語彙、発音について学ぶこと。そこからスタートです。
リスニング(聞く能力)の学習方法
リスニングで大切なのは、聞き取れない音は何か?なぜ聞き取れないのか?現状を把握することです。レベルに合った教材を使用することで、苦手を克服しスキルの向上が見込めるのです。
自信のレベルが把握ができたら、まずは英語の語順に慣れる、英語を英語のまま理解するための訓練、スラッシュ・リーディングを行います。
英語の語順に慣れてきたら、英語を聞き取る能力の向上をはかります。音声教材を使った音読学習(オーバーラッピング、リピーティング、シャドーイング)を行いましょう。
リーディング(読む能力)の学習方法
まずは英文に慣れることが先決です。多読を行い、とにかく英語に触れる機会を増やしていきましょう。初心者の方は、英語の漫画から始めても構いません。
英文をある程度のスピードで、かつ、正確に意味を取って読むためには、日本語を介在せず英語を英語のまま理解することと、英語の語順通りに読めるスキルが必要です。
スラッシュ・リーディングで英文の構造を理解しながら、英語の語順のままで意味を取る訓練をしていきます。さらに、オーバー・ラッピングでスピードアップをはかっていきましょう。
オーディオブックはリーディングだけでなくリスニングのスキルアップにも有効ですので、是非、活用してみてください。
ライティング(書く能力)の学習方法
英語のライティングでは、パラグラフライティングという論理的に内容を分かりやすく伝えるための文章作成法が用いられます。
したがって、日本語のライティングとの違いを認識して、「イントロダクション」「ボディ」「コンクルージョン」で論理を展開していく、パラグラフライティングの手法を学びましょう。
また、省略形を使わない、スラングは口語表現を使用しないなどのライティングのルールや、SDS法やPREP法等の文章校正法についても知識としてインプットしていきます。
英語ライティングでは総合的なスキルの向上が求められますから、多読や瞬間英作文などの訓練も有効です。
こちらの記事に詳しく記載していますので、参考にしてみてください。
スピーキング(話す能力)の学習方法
スピーキングは、アウトプットに必要な語彙や文法などの蓄積と、母国語を挟まずに英語で話したり、伝えたいことを英語の表現で話す訓練という、インプットとアウトプットのバランスが非常に重要です。
正しい発音に気を配って、正しく口や舌を動かすように意識することも忘れてはいけません。
最初のステップとしては、言いたいことを簡単な日本語の表現に落とし込む訓練を行いましょう。複雑な表現をいかに平易な文章に変換できるか?がスムーズに英語を話すカギとなります。
平易な表現への落とし込みができるようになったら、文法や語彙などの知識を総動員して英文を素早く作れるように練習しましょう。
それと同時に、定型表現をストックすること、さらに簡単な表現を瞬時に英語に変換する訓練も進めていきましょう。
まとめ:4技能をバランスよく習得するには、正しい英語学習を!
英語は一朝一夕に身につくものではありませんが、4技能を学ぶ順序、効率的に学ぶ方法は存在します。
今回ご紹介したように、まずは「聞く」「読む」を学習することで基礎を固めてから、「話す」「書く」の学習に取り組むことが重要です。
英語が読めて聞き取れたとしても、話せない書けないでは、英語を習得したとは言えません。4技能をバランスよく伸ばして、着実に力をつけていきましょう。
イングリードでは専属コーチによるトレーニングを実施します