英語の学習に取り組む人ならば一度は聞いたことがあるであろう勉強法、シャドーイング。
シャドーイングはプロの同時通訳者がトレーニングに使う勉強法とも言われ、英語の勉強法としてはもはや定番の勉強法だとも言えるでしょう。
シャドーイングは高い効果が期待できると様々な場所でも紹介されていることから、実際に勉強に取り入れたことがある、または取り入れようと考えている人も多いことでしょう。
聞き取った音をそのまま繰り返すという一見シンプルに見えるシャドーイングですが、そのシンプルさゆえに始めやすい勉強法ではありますが、挫折者も多い勉強法でもあります。
お勧めされてるし、とりあえずやってみたものの、言われているほど効果がなかった、意外とハードルが高くて諦めてしまった、という人が多くいるのもこのシャドーイングなのです。
しかし上述したように、シャドーイングは実際にプロの同時通訳者がトレーニングに使い、多くの英語学習系の情報サイトや情報誌、英語上級者がお勧めしています。
実は多くの場合で効果がなかったと言う場合の取り組み方を分析すると、教材や手法での勘違いや間違いがいくつか見られ、それが失敗や挫折に繋がっているパターンが大部分です。
真にシャドーイングの効果を得るためにはどうしたら良いのか、ここではシャドーイングについての勘違いや手法の間違いから、シャドーイングで効果を得るためにはどうするべきなのかを解説します!
まずはシャドーイングが何なのか、どのようなやり方で、どのような効果が期待できる、またはこのスキルには効かないのかなど、基本を押さえておきましょう。
シャドーイングとは、聞こえてきた英語の音声を1−2語(0.5秒程度)後から、シャドー(影)のように後を追いながら、声に出して復唱するトレーニングです。
シャドーイング中は原則的に耳と口だけを使い、音源の英文を目で追って「読む」ことはしません。あくまでも耳から入ってくる音を復唱していくのです。
シャドーイングには、英語の強弱やリズム、イントネーションにフォーカスするプロソディー・シャドーイング、内容(コンテンツ)理解にフォーカスするコンテンツ・シャドーイングなど、伸ばしたいスキルによって意識する箇所を変えるそれぞれのメソッドがあります。
しかし、耳から入ってきた英語を復唱するという流れは原則同じです。
耳から入ってくる英語を復唱するシャドーイングで期待できる効果はどのようなものがあるでしょうか。
まず、シャドーイングで最も大きく効果が表れるのはリスニング力です。
全世界の英語学習者、とりわけ日本人の多くの英語学習者には「英文を見ればわかるのに、聞いているだけだと理解ができない」、という悩みを抱えている学習者が多くいます。
それは、英語ネイティブが話す英語のリズムや強弱、イントネーション、音声変化に慣れていないため、単語単語を聞き取ることができないこと。
そして、各単語とその発音、さらには音声と意味理解が繋がっていないため、「読んだら分かるのに、リスニングだと理解ができない」という結果になっているのです。
シャドーイングでは、強弱やリズム、音声変化なども含めて聞こえてくるままに発声します。英語の音声の特徴を自身で再現できるようになることで英語の音声知覚が鍛えられ、リスニング力が向上するのです。
さらに音だけに集中するのではなく、内容理解も意識してシャドーイングをすることで、英語を英語のまま理解できるようになり、音声知覚に加えて意味理解も向上させることで、リスニング力はさらに向上すると言えるでしょう。
シャドーイングは発音の改善にも効果を発揮します。
日本語を母語をするほとんどの人が、英語の発音に苦手意識を持っていると言ってもあながち間違いではないでしょう。
それは英語が日本語にはない音がたくさんあること、そして独特のリズムと音声変化があることが大きな要因です。
日本語は基本的に子音+母音の組み合わせで発音され、抑揚や呼気を感じさせる発音や発声は多くありません。
一方、英語には多様な音があり、母音だけでも26個前後、全体の音の数は600以上と言われています。さらに強弱やリズム、イントネーション、音声変化が加わります。
シャドーイングでは、聞こえてくるままに復唱していくので、これら英語の発音、特に英語のリズムやイントネーションの聞き取り練習に効果的と言えます。
シャドーイングは主にリスニング力と発音の向上に大きく効果を発揮しますが、スピーキング力の向上にも効果があります。
それは、シャドーイングをすることにより音声知覚と内容理解がつながり、英語での反応スピードが上がること、そして定型文や表現が口から出てくるようになることでスムーズな発話が可能になるからです。
シャドーイングは、単語と文法の知識を意識することなく自動的に使えるようになる、つまり英語脳を作るのに効果的です。
特にコンテンツ・シャドーイングでは内容理解も同時に行うので、英語を英語のまま理解し、知識を自動的に使えるようになる英語脳の構築に最適です。
シャドーイングでは、大意を理解するリスニングではなく、一字一句逃さずに聞き取り、発声していくことが求められます。
そのため、音源を正確に聞き取る力を付けることができ、その力はTOEICなどの英語の能力試験にも大きく寄与します。
英語力アップに効果が高いと人気の勉強法シャドーイングですが、シャドーイングは全ての技能に効果のあるオールマイティーな勉強法ではあるという認識は間違いです。
上述したように効果のある技能がある一方で、シャドーイングを行っても効果はあまり期待できない技能もあります。
もし英語の読解力を伸ばしたいと思っているのであれば、シャドーイングはお勧めの勉強法とは言えません。
リーディング力は、自分の今のレベルよりも少し高いレベルの文章を多く読むことが、スキル向上の大きなポイントです。
後述しますが、シャドーイングでは理解可能な教材を使うのが成功の大きな秘訣です。逆に言えば高度な文章を使って読解力や語彙力も伸ばしたいと難易度の高い教材を使うのは間違いです。
今ある英語の知識で理解できる教材を使うのが大前提であるため、複雑な文章や専門的な文章の読解ができるようになりたいという目標には、シャドーイングは不向きです。
繰り返しになりますが、シャドーイングでは理解可能な音源や教材を使うことが重要ポイントです。英文を見て読解に時間のかかるような教材を選択するのは間違いです。
シャドーイングでは理解可能な教材を使い、語句と音声、意味をつなげて、英語を英語のまま理解する、つまり音声知覚と内容理解の自動化を促進させることが大きな目標です。
現在持っている英語の知識を使えるものにする事が重要な目標であるので、語彙力、単語力という知識の蓄積をシャドーイングに期待するのは間違いと言えるでしょう。
もちろん知っている単語ばかりではないでしょうし、事前に単語の意味を調べたりもするので語彙力に全く効果がないわけではないですが、特に語彙力を伸ばしたいという人は、語彙力向上のためのトレーニングや勉強を別途行う事をお勧めします。
シャドーイングは耳と口を使って行うトレーニングなので、原則書くという作業はありません。
そのためライティング力には大きな効果は発揮しません。
ライティング力を伸ばしたい人は、ライティングのための勉強を別途した方が効率的かつ効果的です。
シャドーイングはリスニングや発音、スピーキングには高い効果を発揮する勉強法です。
しかしシャドーイングは効果の高さが大きくクローズアップされる一方で、やってみたものの効果がなかったと言う人も多い勉強法です。
勉強方法や認識の間違いが多くの場合の原因で、その認識間違いを持ったまま取り組んでしまい、シャドーイングには効果がないと諦めてしまう結果になっています。
ここではシャドーイングに対する代表的な勘違いや間違いを紹介します。
シャドーイングは効果的な英語学習法として多くの人が勧めています。
シャドーイング専用の教材やアプリなども数多くあり、注目度が多いことも分かります。
しかしシャドーイングが誤解されているのは、シャドーイングは全ての英語学習者が取り組むべきものだという間違った認識です。
その認識が誤解であり間違いだと言える理由は主に以下のような点が挙げられます。
実はシャドーイングは英語学習初心者にはハードルの高い学習法です。
聞こえてくる音声をそのまま復唱するのは、意外と難しいものです。
最初の段階でスクリプトは見れるにしても、いざシャドーイングの段階で何も見ないで復唱するのは簡単なことではありません。
またスクリプトが理解できるものでないと効果は大きく落ちるので、スクリプトを理解するという段階での基礎英文法や基礎英単語力、そして基礎リスニング力は必須条件と言えるでしょう。
そのような意味で、シャドーイングは英語学習の初心者には難易度が高い勉強法で、見切り発車的に試すというのは間違いであると言えるでしょう。
英語初心者は、まずは基礎英語力を磨いてから必要に応じてシャドーイングを取り入れて行くのが正解です。
基礎英語力の構築と、英語力向上が急務である人は、コーチングサービスを利用するのもお勧めです。
一見費用は高く感じられるかもしれませんが、学習者一人一人に最適な学習法と日々の学習をサポートしてくれる英語コーチングは、ダラダラ学習を続けるよりも、効率よく効果的に学習ができるので、最終的なコストパフォーマンスに優れたサービスとも言えます。
上述したようにシャドーイングはリスニング力、発音、スピーキング力の向上には大きな効果を発揮する勉強法です。
しかし一方で、読解力、ライティング力、単語知識の増幅などにはおすすめの勉強法とは言えません。
英語学習者の英語学習の目的は様々です。
ビジネス文書や論文、専門的な文章などを読解できるようになりたい、書けるようになりたいという人はシャドーイングに取り組むよりもそれに適した勉強に取り組む方がよほど効率的です。
シャドーイングの効果にはスピーキング力の向上もありますが、これはリスニング力が上がることで反応が速くなること、英語を発することの瞬発力がつく事からの波及効果とも言えます。
例えば自身の意見を論理的に述べられるようになりたい、プレゼンテーションを控えている、というような状況では、シャドーイングは必ずしも効率的な勉強法とは言えません。
そのような目的を持っている人は、スピーキングやプレゼンテーションに特化した勉強に取り組む方がよほど効果的で効率的です。
このようにシャドーイングは、英語力向上の万能薬であると考えるのは間違いである事を理解する必要があります。
ではシャドーイングはどんな人に向いているのでしょうか。
シャドーイングに取り組むべき人は以下のような人です。
上記に当てはまらない人は、シャドーイングではなく、他の勉強から取り組み、スキルが向上した後に、必要に応じてシャドーイングに取り組むことをお勧めします。
シャドーイングでは教材、音源は効果を上げるために大変重要なポイントです。
好きな映画やドラマを使って、楽しみながら英語力を上げたい、という人も多いでしょう。
しかし全ての人が映画やドラマをシャドーイングの教材として使うのは間違いであり、しっかり自身の目的と目標、そして今の英語力を吟味する必要があるでしょう。
映画やドラマで使われる英語は、大部分が口語的な表現、ジャンルによってはスラングや時代を反映した流行語的な表現が多用されます。また敢えて文法的に間違った言い回しをしたりする場合もあります。
ジャンルによっては独特な世界観から生まれる独特な表現や非日常的な表現が使われたりもするでしょう。
すでにある程度の英語力があり、映画やドラマを字幕なしに観たい、スラングなども使えるようになりたいという目標があるならば、教材として使ってみるのもありかもしれません。
しかし、英語学習の主目的が、日常生活やビジネスの場で使える一般英語の習得ならば、好きだからという理由で映画やドラマを教材として選択するのはシャドーイングにおいては間違いであると言えます。
繰り返しになりますが、シャドーイングはその手軽さとは相反して、難易度の高い勉強法です。闇雲に始めて挫折する人が多いのもこのシャドーイングなのです。
机に向かって読んだり書いたり、難易度の高い文章を読解する勉強ではないため、始める時には簡単だと思うかもしれません。
しかしやってみると、音源を聞きながら復唱し、同時に意味理解をもするのは大変負荷のかかる作業であり、トレーニングであることが分かるでしょう。
机に向かってする勉強じゃないから簡単だと思うのは間違いであり、相応の心の準備が必要なのがシャドーイングです。
効果が高く、多くの英語上級者が勧めるシャドーイングですが、闇雲に手をつけるのは間違いであり、そのように始めてもなかなか成果が得られにくい勉強法です。
では、どのようにすればシャドーイング本来の効果を得ることができるのでしょうか。
結論から言うと、シャドーイングでの英語勉強の成功の鍵は、教材選定とその手順です。
詳しく見てみましょう。
シャドーイングは英語の音源を復唱するという一見単純に見える勉強法ですが、準備なく闇雲に始めるのは間違いです。
間違った手法でシャドーイングをするとどうなるでしょうか。
一番に言えるのは、「効果がない」と、効果が出る前に挫折する、ということです。
シャドーイングは、実際にシャドーイングに入る前に準備段階を経てから、実際のシャドーイングに入っていきます。
そのステップを着実に踏んでからシャドーイングに入ることで、シャドーイングの効果が発揮されていきます。
ありがちな間違いは、「シャドーイングはただ音源を復唱すれば良い」という認識でいきなりシャドーイングから始めてしまったり、ステップを経ずにシャドーイングを行うことです。
その場合、シャドーイング本来の効果を実感できず挫折してしまう、またはシンプルに見えたトレーニングが意外とハードルが高く、途中で挫折してしまう可能性が大です。
せっかくシャドーイングに取り組むのであれば、効果を最大限に実感して、英語力を向上させたいものです。
効果を実感して英語力を向上させるためには、間違いなく着実にステップを踏んで取り組むことが重要なのです。
シャドーイングにおいて、教材選定は一番重要なポイントと言っても過言ではありません。
教材を選定するときは、以下の点を吟味して選ぶと間違いなく効果を得られるでしょう。
シャドーイングで効果を上げるためには難解すぎない教材、音源を選択する事が大変重要です。それが一番のポイントであると言っても過言ではありません。
せっかく勉強するのであれば、背伸びして難しい教材で読解力や語彙力も伸ばしたいという気持ちは理解できますが、シャドーイングの効果を実感したいのであれば、背伸びした教材の選択は間違いであると言えます。
なぜ間違いだと言えるかといえば、シャドーイングで重要なのは、音声知覚と意味理解を繋げることができるようになる事だからです。
読んでも理解が難しいもの、難解な単語ばかりが出てくる教材の選択はシャドーイングにおいては間違いです。
読んでおおかた理解ができる教材を使い、耳から入ってくる英文を、そのまま理解できるようにすることが成功するシャドーイングのコツです。
専門外、難解で高度な内容の教材はシャドーイングには不向きです。
日本語でも話すスピードが早い人もいれば、ゆっくり話す人もいるように、英語ネイティブも早口の人やゆっくり話す人、それぞれです。
音源を選ぶ際は、音声を聞いてある程度理解ができる、またはテキストを見た後であればおおかた理解ができる教材を選ぶことが重要です。
リスニング力の向上を焦るばかりに、早口の音源を選択するのは間違いです。
内容ももちろんですが、テキストを見た後でも理解できないほどのスピードの音声を選ぶのは間違いと言えます。
シャドーイングでは自身のレベルに合った教材を選ぶことが重要なのです。
教材は、シャドーイング用の教材も良いですが、原則音源とスクリプトがあれば成立するので、YouTubeなどに上がっている芸能人や著名人のインタビューや講演、Netflixのドキュメンタリー番組なども良いでしょう。
その中でもTED Talkは音源、スクリプト、速度調整、和訳もついている動画が多く、話されている英語も使われる実用的な英語が大部分なので、シャドーイングにもお勧めです。
TEDを使ったシャドーイングがお気に入り! 都内に3店舗を構えるカフェ「forucafe」の経営者である平井さんが英語コーチングで得た成果とは?
教材、音源が準備できたら、早速シャドーイングで英語の勉強を始めたいですよね。
シャドーイングは音源を少し後から復唱するだけ、と思っている人も多いのですが、実際にシャドーイングに入る前の準備段階があります。
この準備段階のステップを踏むことでより効果的にシャドーイングが行えます。
また逆に言えばこの準備段階を踏まずにシャドーイングに入ってしまうと、何が良いのか分からない、効果が感じられない、難しすぎる、と途中で挫折してしまう可能性が高くなりますので、しっかりステップを踏んでいきましょう。
イングリードでは、5ステップ・シャドーイングを推奨しています。
ステップは以下の通りです。
No. | ステップ | 目的 |
1 | リスニング | 音声内容の主旨を理解すること |
2 | 英文チェック | 英文の内容を完全に理解すること |
3 | 音読 | 英語をスムーズに口から発声すること |
4 | シンクロ・リーディング | 正しい英語の発声(発音・抑揚・アクセント・リズム)を練習すること |
5 | シャドーイング | 英文を見ないで音声と同じようなスピード・発音で発声すること |
これらのステップを挟むことでより効果的にシャドーイングを行えます。
繰り返しになりますが、シャドーイングは負荷の高い高度なトレーニングです。
英語初心者が勉強に取り入れるにはハードルが高い勉強方法とも言えます。
しかし英語を声に出すことは、英語学習において大変重要なことです。
英語を聞き、声に出してみて、録音したものを聞いてみることは英語力の向上に大きく役に立つものです。ですので、英語初心者でシャドーイングがまだ難しいという人は、音読学習から始めてみましょう。
音読は、シンプルに言えば「英文を声に出して読み上げる」ことです。シャドーイングと大きく違うのは、英文を見ながら声に出す点です。
英文を目で確認することができるので、英語初心者にもハードルは低めです。
音読を始める場合でも、教材を選ぶ際は、音源がついているものを選びましょう。
また自身が音読をする前に音源を聴いて、音読ではその音声を真似する意識で読み進めましょう。
そして基礎英文法、基礎英単語をある程度マスターし、音読にもある程度慣れて来たのであれば、シャドーイングにも挑戦して行くというステップが間違いない着実な道です。
効果が高いとたくさんの英語上級者の人が勧めるシャドーイング。
英語力向上のために勉強に取り入れたいと思っている人は多いでしょう。
しかし「英語の音源を復唱する」という一見シンプルで簡単に見えるこのシャドーイングは、耳で聴いて、それを真似しながら声に出し、同時に意味を理解するという高度なトレーニング法で、大変負荷のかかるトレーニング法です。
実際、挫折する人が多いシャドーイングですが、効果がなかったと言う人の多くがその手法において間違いを犯しているケースが大部分です。
成果を上げていくためには、教材選びと、シャドーイングに取り組む正しいステップを踏むことです。
イングリードでは5ステップ・シャドーイングを推奨しており、5つのステップを踏むことで、音声知覚と内容理解を着実に繋げられるようになります。
このように、自分に合った教材と正しいステップを踏んだ正しいシャドーイングを継続して行うことで、シャドーイングによる英語力アップの効果を間違いなく実感できるようになるでしょう。
正しくやれば成果を上げられるのは間違いないこのシャドーイング、ぜひ勉強に取り入れて、効果的に英語を勉強していきましょう。