企業のグローバル化が進むなか、転職活動と切り離せない存在となってきたTOEIC。
上場企業の半数以上が「採用時にTOEICスコアを参考にすることがある」というデータもあるほど、企業はTOEICスコアを重視する傾向にあります。
TOEICは転職成功の重要なポイントである、といっても過言ではないでしょう。
この記事では転職志望の社会人に向けて、履歴書に書けるTOEICスコアや企業に英語力をアピールする方法について解説していきます。
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TOEICとはオフィスや日常生活における英語のコミュニケーション能力を測る試験のこと。
年間約250万人が受験するほどメジャーな試験であり、多くの企業がTOEICスコアを採用の基準として取り入れていることも有名です。
一般的には「TOEIC600点あれば転職活動で英語力をアピールできる」と言われいていますが、残念ながらそれは現実的ではありません。
ここではその理由を解説していきます。
最近のTOEIC平均スコアを見てみましょう。
2017年 : 582点
2018年 : 580点
2019年 : 588点
出典:TOEIC Program DATA & ANALYSIS
TOEIC平均スコアはどの年も580〜590点前後で、600点近いスコアで推移しています。これは過去10年さかのぼってもあまり変わっていません。
つまりTOEIC600点とはTOEIC年間平均点とほぼ同じスコアであり、あまり高いレベルとは言えないのです。
ちなみにTOEIC600点では以下のような能力が身についた状態だと言われています。
基本的なやり取りであれば海外旅行で困らないレベル、といったところでしょうか。
海外のクライアントと交渉したり、海外にある本社とテレビ会議をしたり、英語で資料を作ったりする、いわゆる英語で仕事ができるレベルにはまだ到達できていません。
そのためTOEIC600点を履歴書に書いても「英語ができる」というアピールにはならないのです。
企業によって求める英語力は異なってくるため「TOEICで何点あれば転職できる」「履歴書にTOEICスコアを書いてアピールできる」ということは一概には言えません。
転職者に企業が求めるのはグローバル化に対応できる即戦力です。英語で書かれた資料を処理したり、海外の事業所やクライアントと英語でコミュニケーションが取れる人材を必要としています。
そのため最低でも「英文メールでやり取りできる」「会議のアジェンダの内容が理解できる」「業務に関する資料の内容が理解できる」といったレベルに到達している必要があり、その目安はTOEIC730点〜になります。
TOEIC730点以上あれば「最低限のことは英語で対応できます」という証明になり、履歴書にTOEICスコアを書いて英語力をアピールすることができるでしょう。
ただし、英語を使うことが当たり前の部署や企業であれば、さらに高いスコアが必要です。
外資系企業を目指す場合はTOEIC800点以上、国際部門ならTOEIC860点以上を目指しましょう。
業界や業種によって必要とされる英語力は異なり、一概に「TOEIC何点あれば安心」といった基準はありません。
グローバル展開しているメーカー、IT、国際物流、貿易、製薬、旅行などの業界では英語力が求められる職種が多いでしょう。
外資系企業であれば尚更です。帰国子女や外国人の同僚がいたり、社内公用語が英語だったりと、英語ができることが当たり前の企業もあります。
そのため、自分が転職したい業界・職種ではどれくらいの英語力が必要なのか予めチェックしておきましょう。
履歴書の書き方には決まりがあります。間違った書き方をしてしまうと「常識がない人だ」と悪い印象を与えかねないので注意しましょう。
TOEICスコアは、履歴書の「免許・資格」の欄に記入します。履歴書にTOEICスコア欄が別で設けられている場合は、そちらに記入しましょう。
書き方は左から、取得年月→資格名→スコアの順番です。取得年は和暦か西暦か、履歴書全体でどちらかに統一して書きましょう。
通常は略語が用いられるものでも、履歴書では正式名称を書くのが鉄則。
TOEICの正式名称は、TOEIC Listening & Reading Testです。履歴書の免許・資格の欄に、取得年月→TOEIC Listening & Reading Test ◯◯点取得、と書きましょう。
履歴書 記載例) 2020年 4月 TOEIC Listening & Reading Test 730点 取得
一般的にTOEICといえばTOEIC L&Rを指すため、L&Rを省略して「TOEIC公開テスト〇〇点取得」という書き方も浸透してはいますが、TOEICにはいくつか種類があるため正式名称を書いておけば間違いありません。
TOEICには、IPテストと呼ばれる学校や企業などが利用できる団体特別受験があります。
TOEIC Programを運営する日本ビジネスコミュニケーション協会(以下、IIBC)は、IPテストの結果は公開テストと同じであると位置づけているため、TOEIC IPテストの結果を履歴書に書いても問題ない、という見解もあります。
しかしTOEIC IPテストは、TOEIC公式テストで出題された過去問が再利用されたり、受験者の写真入りのTOEIC公式認定証が発行されないことから、企業によっては正式な結果として認めないこともあります。
転職したい企業の採用条件にTOEICスコアの設定がある場合、TOEIC IPテストの結果でも問題ないかどうか予め確認しておきましょう。
また、TOEIC IPテストの結果を履歴書に書く場合は、IPテストであることを忘れずに追記しましょう。
履歴書 記載例) 2020年 4月 TOEIC Listening & Reading Test(IPテスト)730点 取得
もっとも確実なのは、転職前に余裕をもってTOEIC公式テストを受験しておくことです。
ほとんどの人が転職先として2社以上の選考を受けるはずなので、選考毎に「TOEIC IPテストで問題ないか?」と考えるのは時間の無駄です。
TOEIC公式テストの結果通知には1ヶ月かかるため、転職活動を始める前に余裕をもって受験しておきましょう。
転職希望のライバルと差をつけるのであれば、ほかの英語能力試験も併用することをおすすめします。
英語で仕事をするなら英語の4技能(聞く・読む・話す・書くスキル)を使いこなせることが重要になります。
英語を話す・書く力を測ることができるTOEIC Speaking&Writtingを併用するとより具体的に英語力をアピールすることができるでしょう。
TOEIC S&W以外なら、IELTSやTOEFLもおすすめです。
海外の大学進学や海外移住の要件にも利用されている試験ですので、かなり難易度が高い試験です。
海外ではTOEICと比べて圧倒的な知名度を誇ることから、外資系企業ではIELTSやTOEFLの結果を重視することもあります。
ライバルと差をつけて転職を成功させるなら、TOEIC S&WやIELTS、TOEFLも活用するといいでしょう。
今まで何度かTOEICを受験したことがある人は多いと思います。そんな時、履歴書には最新のスコアを書くべきなのでしょうか?
資格や免許といえば有効期限があるような気がしてしまいますが、TOEICには有効期限がありません。3年前のスコアでも5年前のスコアでも問題はなく、これによってTOEICスコアの足切りをクリアできる可能性もあります。
IIBCも有効期限については特に名言しておらず、いつ取得したTOEICスコアであっても履歴書に書くことは可能です。
とは言っても、TOEFLやIELTSなどの国際的な英語能力試験の有効期限が2年であること、TOEIC公式認定書の再発行期限が2年以内となっていることなどから、TOEICも2年以内の結果を使うことが一般的です。
あまりにも古いTOEICスコアでは採用担当者も英語力の評価をしにくくなるので、やはり直近2年以内のTOEICスコアを書くほうが無難です。
前回のTOEIC受験から期間が空いている人は、転職前に改めてTOEICを受験して最新のスコアを準備しておきましょう。
TOEICは問題の正解数に統計的な処理を加えてスコアを算出しているため、英語力が同じであればスコアにぶれが生じないように作られています。
だからといって、1回受験したTOEICの結果をもって「これが今の英語力」と決めつけるのは早すぎます。
初めての受験で緊張した、隣の人の紙をめくる音が気になり集中できなかった、リスニングを聞き逃して焦ってしまった、など自分のベストを出せていないことがあるからです。
そのため可能であれば転職前に2回以上TOEICを受験しておくことをおすすめします。もっとも高いTOEICスコアを履歴書に書くことができるため、あなたの英語力を最大限にアピールすることができるでしょう。
「仕事が多忙でTOEICを受験できなかった」「急に転職の機会がありTOEICの結果が間に合わなかった」など、TOEIC未受験で転職しなければならない時はどうすればよいのでしょうか。
TOEIC未受験で英語力をアピールする方法について説明してきます。
最善の手段とは言えませんが、履歴書の備考欄を用いて、英語力向上に前向きであることをアピールしましょう。
「来月のTOEIC公式試験で730点取得を目指しています」「直近で受けたTOEIC模試で730点を超えました」など直近の目標や模試の実績を書くことで、英語学習に前向きな姿勢をアピールすることができるでしょう。
少しでも履歴書を魅力的に魅せたいからといって、書くだけで終わらせないように注意してください。本当に英語力を向上させる気持ちがあることが前提です。
やはり模試の結果などを用いて、ある程度の説得力を持たせることが重要と言えるでしょう。
すでに英語を使って仕事をしている場合は、実務経験を書くことで英語力をアピールすることができます。
「海外のベンダーとメールでやり取りしていた」「海外に自社製品をセールスするために英語でプロモーション活動をしていた」「海外のクライアントに向けて英語でプレゼンしていた」など、英語を使って仕事をした経験を履歴書に書きましょう。
実務経験はなるべく具体的に書き、どのような仕事なら英語で対応できるのかを分かりやすく書くことがポイントです。
英語圏に留学したり、海外インターンの経験があれば履歴書に書いて英語力をアピールしましょう。
現地でどのような勉強、仕事をしていてどのような成果を残したのか具体的に書くことが大切です。
特に日本人は英語を話すこと、特に英語で交渉・議論することが苦手とされています。
現地の人を相手にプレゼンをしたり、セールスをした経験などは企業からも非常に高く評価される可能性があります。
キャリアアップを目指した転職においてTOEICは切り離せない存在になってきています。
そのため転職を有利に進めるためにTOEICを受験する人もいますが、TOEICの結果が肩書きだけにならないよう注意しましょう。
企業が必要としているのはTOEICの高得点取得者ではなく、グローバル化に対応できる優秀な人材です。
TOEICスコアを上げて希望の会社に入社したけど「グローバルな環境になじめない」「実は英語が話せなくて会議についていけない」といったことになると、早期離職に繋がってしまう可能性も。
「転職に向けてTOEICスコアを上げよう!」と考えている人は、英語で仕事をするイメージも持ちながら総合的に英語力を伸ばすことが大切です。
TOEICは社会人にとって有効な自己投資のひとつ。身につけた英語力は必ずあなたのキャリアを後押ししてくれることでしょう。