英検は英語の基礎に効く? 目的別でTOEICと英検を徹底比較
英語を勉強されている方の中には、定期的に英語の試験を受験して自分の英語のレベルを測りたいと思っている方も多いと思います。
英語の試験の代表格といえば、「TOEIC」と「英検」です。
どちらも名が知れた試験で公式資格としても利用できますが、果たしてどちらの試験を受ける方が英語力アップに効果的なのでしょうか。
今回はTOEICと英検を目的別に比較をし、どちらが英語力向上に効果的かを検証していきたいと思います。
Contents
英検とは?
「英検」の名前は聞いたことがある方が多いと思いますが、具体的にはどのような試験でどのような英語力を測っているのでしょうか。
ここでは、「英検」の試験内容について詳しく解説していきます。
英検の試験概要
「英検」とは、正式名称を「実用英語技能検定」といい、年3回実施される英語検定試験です。
5級(初級)、4級、3級、準2級、2級、準1級、1級の7つのグレードから構成されており、それぞれリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4つの技能を測定します。
4級、5級のスピーキングテストは、録音したものを提出する方式なので、自宅や学校などでパソコン、スマートフォンから受験することも可能です。3級から1級のスピーキングテストは試験官との面談形式で行われます。
試験受験後は、受験をしたグレードの合否結果と英検CSEスコアと呼ばれる4技能のトータルスコアのフィードバックを受けることができます。
英検の試験問題は、日常や学校生活やを想定した問題や社会問題に関する問題が中心に出題されるので、ビジネスに関する英語のみのTOEICと比較をすると、より幅広い英語力が試されます。
英検のグレードをCEFRで比較する
「英検」のそれぞれのグレードは一般的な資格で見るとどの程度のレベルなのでしょうか。
ここでは、ヨーロッパで作成された外国語学習者の習熟度レベルを6段階で示すガイドライン、CFERと「英検」のグレードを比較して見たいと思います。
CFERでは英語の習得レベルを「A:基礎段階」「B:自立段階」「C:熟達段階」に分類し、それらをさらに2段階に分類し、全部で6段階に分けています。
それぞれのレベルは下記の通りです。
C2:母語話者と遜色のない熟練者
C1:優れた言語運用能力を有する者・上級者
B2:実務に対応できる者・準上級者
B1:習得しつつある者・中級者
A2:学習を継続中の者・初級者
A1:学習を始めたばかりの者・初学者
それでは、英検のグレードはCFERと比較をするとどの程度のレベルなのでしょうか。
参照:文部科学省
上記は2018年に文部科学省が作成した、CEFRと各種試験の対照表です。
この表によると、3級取得者は、A1:英語初学者レベル、準2級でA2:英語初級者レベル、2級でB1中級者レベル、準1級でB2:準上級者レベル、1級でC1:上級者レベルとなっています。
英検1級取得に同等するC1は、海外大学や大学院への合格に必要な英語力、もしくは海外移住権を獲得するのに必要な英語力に匹敵するレベルです。
このように英検1級取得者は高い英語力の持ち主だということが分かります。
英検の勉強をすることで、英語力は伸びるのか?
では、果たして「英検」の試験勉強をすることで英語力は伸びるのでしょうか?
先ほどのCFERとの比較で明らかになった通り、英検の上位グレードを取得することにはかなりの英語力が必要です。
そのため、英検の試験対策は英語力向上に効果的と言って間違いないでしょう。
また、英検では、英語に必要となる4技能全てを使うため、試験対策をすることで総合的な英語力をつけることができます。そのため、付け焼き刃ではない、実用的な英語を身につけることができます。
英検は実社会で使える資格?
「英検」は英語を伸ばす上で効果的な試験ということが分かりました。
では、具体的に「英検」は、大学や企業において英語力の証明に使えるのでしょうか?
英検は大学や実社会でどう役に立つのか?
「英検」は、日本において英語の実力を測る試験として認知されていますので、基本的にどのような場面でも使えます。
大学や大学院進学、就職や転職、社内の昇進昇格や異動の際などに「実用英語技能検定◯級取得」と明記すれば、英語力の証明になります。
近年は、TOEICが普及していることもあり、就職後は英検よりもTOEICのスコアを問われることが増えています。
しかし英語学習について熟知している企業人事担当者は、TOEICの800,900といったハイスコアよりも英検1級を取得することの難しさを理解している方も多いですし、スピーキング力やライティング力を知りたい場合は英検のスコアを聞かれることもあります。
そのため、英検の取得は確固たる英語力の証明として使用することができるのです。
実はIETLSと英検は同盟関係にある
IELTSは、イギリス英語を母体とした英語試験で、主に英語を母国語としない方の海外大学や大学院への進学、海外移住などおける英語力の目安とされる試験です。
IELTSも英検と同様、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの総合的な英語4技能を測る試験ですが、実はこのIELTSと英検は同盟関係にあります。
日本では、公益財団法人日本英語検定協会という団体がIELTSを運営しており、この団体は同時に英検の運営もしているのです。
IELTSの問題は、もともとブリティッシュ・カウンシルというイギリスの団体で作られていますし、IELTSの方が難易度の高い試験ですが、英検の問題構成等はIELTSものと良く似ています。
この理由から、一部の海外大学では英検をIELTSと同等試験とみなし、大学進学の要件と設定しているところもあります。
「英検」vs「TOEIC」どちらの受験が有効?
ここまで英検についてご紹介してきましたが、では英検のグレード取得とTOEICのスコア取得はどちらが有効的なのでしょうか?
一長一短なので、どちらも受験するに越したことはありませんが、受験には費用も時間もかかるため、どちらかに絞って勉強、受験をしたいという声が多いと思います。
ここでは、大学進学、就職、転職、昇進昇格というカテゴリーに分けて、英検とTOEICの有効性を比較していきます。
英検 VS TOEIC①/大学進学に最適なのは?
大学進学に最適なのは、英検、TOEICのどちらなのでしょうか?
ここでは、海外大学への進学と国内大学への進学に分けて比較をしていきたいと思います。
①国内大学進学
国内大学進学においては、英検、TOEIC両方が使えます。
主に英検やTOEICのスコアを大学進学に使うのは、英語試験の免除、AO試験などが目的になります。
この場合、大学毎に英検のグレードやTOEICのスコアの目安が設けられていることが多いです。
最近は、TOEICのスコアでもL&R(リスニング&リーディング)のスコアだけではなく、S&W(スピーキング&ライティング)のスコア両方を求めてくる大学が多いです。
目安としては、英検だと2級以上、TOEIC(L&R+S&W)1,100程度のスコアを基準にしている大学が多いです。
国内大学進学においては英検かTOEICを利用する場合は英検とTOEICの問題を比較し、どちらが自分にとって解きやすいかを確認し、選択をするといいでしょう。
②海外大学進学
海外進学においても、英検、TOEICの両方を使用することができますが、1年程度の現地の大学に通う留学になると、IELTSやTOEFLといったテストスコアを求める学校が多いです。
しかし、最近では英検のグレードを受け入れる海外大学も少しずつ増えており、だんだんと英検による海外大学の門戸が広がってきました。
近年では、日本英語検定協会が海外大学いん働きかけ、「英検留学」という名の元、北米を含む約400大学・カレッジが留学時の語学力証明として英検を認定しています。
一方、TOEICは海外大学進学においては、一部の大学間の交換留学では認められているものの、一般的な海外大学進学では認められていないことが多いのが現状です。
海外大学進学では、TOEICよりも英検を受験し、ハイグレード取得を目指すことをおすすめします。
英検 VS TOEIC②/就職活動でアピールできるのは?
就職活動でアピールできるのは、TOEICです。
下記のグラフは2013年に行われたIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)の「上場企業における英語活用実態調査」の結果ですが、この結果によると上場企業の約7割が採用時にTOEICスコアを参考にしています。
もちろん英検のスコアを就職活動で使用することもできます。特に英検のハイグレードを取得している方は十分にアピールをすることは可能です。
ですが、就職活動ではTOEICスコアを基準に測るのがメジャーというのが現状なので、TOEICのスコアアップを目的に勉強することをおすすめします。
英検 VS TOEIC③/転職や昇給・昇格に用いられるのは?
最後に、転職や昇給・昇格に用いられるのは英検とTOEICどちらかを見ていきたいと思います。
下記は、IIBCの「上場企業における英語活用実態調査」の結果によると、2013年の時点で、TOEICを異動・昇進・昇格にしている企業は15.8%、現在要件にしていないが、将来はそうする可能性があると答えた企業は45.2%です。
合計すると6割以上の企業がTOEICスコアを参考にしているか、今後参考にする可能性があることが分かります。
社内の異動や昇進昇格においては、TOEICのハイスコアを持っている方が有利であることが分かります。
では、転職においてはどうでしょうか。
転職におけるTOEICのスコアの使用に関するデータはありませんが、多くの企業がエントリー時にTOEICスコアの記入を求めています。
もちろん、英検のグレードも記入することはできますが、TOEICを基準に英語力を判断している会社が多いのが事実です。
社会人になった後の転職や昇給・昇格では、TOEICのスコアを持っていることが有利であることが分かります。
イングリードのTOEICコーチングコースでは最短でTOEICのスコアアップを狙うプログラムが組まれています。
英検のグレード別英語力
英検受験、TOEIC受験は、それぞれの目的に応じて選択をし、勉強をすることが大切だということが分かりました。
しかし、特に明確な目的がなくまずは英語力を向上したいという方の場合、どちらか一つを選んで自分の英語力を測る目安として受験をして見るのも良いでしょう。
そういった方のために、ここでは英検のグレード別の英語力について紹介したいと思います。
英検1級(TOEIC945〜)ができること
英検1級取得者は、ネイティブに近いレベルで、英語を使えるレベルとされています。
合格に必要となる語彙数は10000~15000程度と言われており、海外に留学をしても問題なく生活ができ、学校の授業を理解できるレベルと考えてよいでしょう。
また、英検1級の2次試験では、即興で相手に自分の考えを的確に伝える力を見られます。そのため、英語力だけでなく、英語を使って相手とある程度難しい会話ができるレベルと考えて良いでしょう。
英検1級取得者は、国内の様々な資格取得等において免除を受けることもできます。例えば、通訳案内士(ガイド)試験では外国語(英語)筆記試験が免除されます。
英検1級取得はビジネスや大学等様々な場面において、英語を使いネイティブスピーカーと対等にコミュニケーションを取れるレベルと言って良いでしょう。
英検準1級(TOEIC785〜)ができること
英検準1級は、社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができるレベルとされています。
必要となる語彙数は、約7,500〜9,000語でと言われており、リーディングで出題される問題の内容が多少アカデミックなものや社会問題に関するものになるため、英語を使って難しい問題を理解する力が求められます。
2級と比較をすると、日常では使用しない難易度の高い単語の出題頻度が増えるため、英語でニュースや社会問題について書かれたコラムなどを理解する力が求められるでしょう。
英検準1級のスピーキングのテストでは、英検1級の試験のように難しい問題に対する自分の意見を求められる問題はあまりまりません。
それよりも、状況を自然な英語を使ってスムーズに説明する力を求められます。
これらから総合して英検準1級は、日常生活のコミュニケーションを取ることができ、英語でニュースや社会問題を理解できるレベルと言えるでしょう。
英検2級(TOEIC550未満)ができること
英検2級は、高校卒業程度で、普段の生活の中での会話ができると言われています。
そのため、学校で英検2級を進めている高校も多いです。
英検2級を取得していることを証明することで、加点や試験免除を設けている大学も多く、公益財団法人日本英語検定協会のホームページによると、137校(2019年1月現在)が試験免除を受け入れています。
合格に必要な語彙数は、約5,100語とされています。単語のレベルは高校生の英語の教科書に出てくる英語のレベルで、日常会話や社会生活で必要になる単語が多いです。
英検2級のスピーキングに関しては、日常にありがちな場面をイラストにしたカードの説明、それに対する自分の考えを簡単に聞かれる問題が出されることが多く、日常の簡単なコミュニケーションができるどうかが見られています。
このため、英検2級は、英語の基本的な文法や単語が頭に入っており、簡単な日常会話をできるレベルと言って良いでしょう。
英語学習における英検受験のメリット
このように英検2級以上のグレードを取得することで、日常会話だけでなく様々な場面における英語力を身につけることができます。
では、英語学習において敢えて英検を受験することのメリットとは何でしょうか。
英検CSEスコアにより、総合的な英語力の変化を測ることができる
英検では、受験後の個人成績表に自分のCSEスコアが表示されます。
このCSEスコアでは基準は全回次共通となっていますので、回次ごとの成績の変化を客観的に見ることができます。
また、英語のリーディング、リスニング、ライティング、スピーキング4技能をのスコアのため、総合的な英語力を測るものさしになります。
またCEFRに対応した他の資格試験のスコアと比較することができるので、TOEIC、IELTSなど他の英語試験のスコア目安を確認することも可能です。
TOEICのような特定のテスト対策を必要としない
TOEICは、短い時間で大量の問題を解く必要があること、ビジネスにのみ絞られた問題が出ることから、ハイスコアを狙う場合問題を効率的に解くための対策やTOEIC対策用の英単語学習などが必須になります。
中にはテクニック的な準備も必要となり、本質的な英語学習ではないテスト対策もしなくてはいけないケースが多いです。
しかし、英検は日常生活や、社会問題に関する出題がされること、基本的な文章読解問題やリスニング問題から構成されているため、基本的な英語学習をコツコツ続けていれば問題なく解ける問題が多いです。
そのため、英検に関しては、本質的な英語学習に時間を割く中でグレード獲得を目指すことができるでしょう。
大学受験に使える英語資格や勉強法・対策法なら、スタディチェーンをご参考にしてください。
TOEICと英検の徹底比較まとめ
今回は、TOEICと英検を比較してきました。
どちらの試験も一長一短ありますが、結論としては、高校生の英語学習及び大学進学に向けた準備には「英検」の受験をおすすめします。
一方、社会人になってからはやはりTOEICを中心に英語力を判断される機会が増えますので、TOEICの受験を通じたスコアアップが大事です。
TOEICに関しては、近年はリーディングとリスニングのTOEIC L& Rのスコアだけでなく、TOEICS&Wに関するスコアも求める企業が少しずつ増えつつありますので、スピーキング、ライティングの対策も日常から初めることをおすすめします。